シャワーを浴びて健吾が戻ると ダイニングテーブルに用意されていた朝食は 意外にも和食だった。

定番の鮭や厚焼き玉子の他 いくつかの小鉢。
 

「これ全部、絵里加が作ったの?」

驚きの声を上げる健吾に、
 
「ママの常備菜も使ったよ。」

ご飯とお味噌汁を運ぶ絵里加が言う。
 

料理はどれも美味しくて、健吾は驚きと感激の声が止まらない。

向かい合って食べる食事は、少し照れくさかったけれど 二人は 健康的に平らげていく。
 

「ヤバいな。俺、遅れをとっているよ。」

ご飯のおかわりをした健吾が言う。
 
「なんの遅れ?」

絵里加は意味がわからずに、聞き返す。
 

「絵里加 奥様教育 これなら合格点でしょう。俺、まだ新入社員にもなっていないのに。」

健吾は、途方に暮れた声をだす。
 
「絵里加、ずっとママのお手伝いしていたから。」

絵里加は誇らし気に言う。
 

「すごく美味しいよ、全部。」

健吾の言葉に絵里加は、嬉しそうに微笑む。
 

「ママが料理上手だから。絵里加の家 休日はお祖父様達と外食することが多いのね。でも絵里加、いつも ママの料理の方が美味しいって思っていたの。」


昨夜、そのままで寝たリビングも きれいに片付いている。
 

「絵里加、お片付けも上手だね。可愛いだけじゃなくて 家庭的な良い子だ。」

健吾に優しく言われて、絵里加はニコッと笑う。
 

「良い奥様になれるかな。」
 
「なれる、なれる。エッチも合格点だし。」

甘く言う健吾。
 

「もう、ケンケン。」と言ったあとで、
 
「ただの合格点なの?」

と上目使いに健吾を見る。
 

「ごめん、ごめん。満点だよ。世界一。」

健吾は明るく答える。


昼間は 可愛くて明るくて 家庭的で。

夜になると、甘く熱くて、淫らで。


健吾の心を掴んで離さない。
 

「仕度ができたら 出かけよう。外は暑そうだよ。」


健吾の言葉に、絵里加は笑顔で
 

「ケンケン、絵里加の洋服、選んで。」と言う。


素直な可愛さが、健吾の愛をさらに深める。


遠くから見て 思い続けていた絵里加。

でも健吾の方を向いて 一つになった絵里加は 思っていた以上に素晴らしい。


そんな絵里加と一緒にいることは 健吾を一歩前に進ませていた。