翌日から、絵里加を送る時 家の近くの公園に寄って 木陰でキスをすることが二人の日課になった。

日が伸びた初夏の空は、いつまでも明るい。

二人は人影を避けて、公園の奥を歩く。


小さな頃からよく遊んだ公園。


大人になってからも、こんな形でお世話になるとは思わなかった。
 

「夏休み、親父の会社の工場でバイトしたいって言ったんだ。でも、親父に駄目って言われたよ。」

誕生日の数日後、健吾は言う。
 
「急にバイトって。どうして?」


デート代が負担になっているのかと、絵里加は不安になる。

二人でいる時健吾は、全部の支払いをしていたから。
 

「早く会社に慣れたくて。少しでも、仕事を覚えた方がいいと思ったんだ。」

健吾の言葉は絵里加の胸を、熱くする。
 

「ケンケン、絵里加の為?」

絵里加を養う為に。少しでも早く、二人が結婚できるように。

絵里加の目は、涙が滲む。
 

「今、俺に必要な事は、バイトじゃないって。勉強もだし 色々な経験とか 人脈を広げるとか。そういうことができるのは、大学生のうちだからって。」

健吾の言葉は、深く絵里加の心に沁みる。
 

「ケンケンのお父さん、素敵な人。」

絵里加は、震える声で言う。
 

「絵里加との事は、ちゃんと考えているからって言われて。どう考えているのかな。」

健吾は、フッと笑って絵里加を見る。
 

「絵里加も不安な時があるの。全部、親に甘えているでしょう。全然、自立できていないから。でもパパもママも、それでいいって言うの。」

絵里加や健吾は、特別な人だから。

でもいつか、絵里加が親になったとき 同じことを子供にできるのだろうか。