健吾は9時前に、絵里加を家まで送り届けた。 二人、名残惜しくて切なく見つめ合う。 「おやすみ、絵里加。」 「今日は、ありがとう。おやすみなさい。」 絵里加は、小さく手を振って家に入っていった。 花のような可愛い後ろ姿が ドアの中に消えるのを見届けて 健吾は歩き出す。 ずっと一人で思い続けてきた絵里加が 振向いて自分に微笑んでくれる。 それ以上を望むことは、贅沢だから。 心以上のものは、ないと知っているから。 若い健吾の葛藤は 健康な証しだけれど 少し自分を責めていた。