熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします

 

「どうしよう、私……。また、八雲さんを怒らせちゃいましたかね……」


 弱気な言葉を溢した花を前に、ぽん太が緩く首を左右に振った。


「いんや、大丈夫じゃよ。八雲は怒ってはおらん」

「でも……」

「そうですよ、花さん。八雲坊は決して、花さんに怒っているわけではありませんよ」


 ぽん太に続いて、黒桜も花を慰めるように言葉を添えた。


「ただ……八雲は今、八雲自身が言ったとおり、少々複雑な事情を抱えておる」

「複雑な事情……ですか?」


 神妙な顔つきで話しだしたぽん太を前に、花は自分の胸の鼓動が不穏に鳴りだしたのを感じた。