熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします

 

「え……いいんですか!?」

「ここで止めて、あとあと愚痴を言われたら敵わないしな」


 これも先程、稲荷社への参拝を止めたことへの八雲なりの譲歩なのだろう。

 土産を見ることはよくても、稲荷社への参拝はダメというのはどうにも腑に落ちないが、理由を聞けないのだから仕方がない。


「但し今言ったとおり、熱海に長く住んでいるあいつらに、熱海土産など必要ないということだけは頭に入れておけ」


 と、再度八雲に釘を刺された花は、「わかりました」と返事をしてからワゴンへと向かった。


「いらっしゃい。おふたりは、カップルさん? それとも私達と同じようにご夫婦かしら?」


 ワゴンの前に立つなり、早速声をかけてきたのは店主の妻のほうだった。

 快活な笑顔が印象的な、可愛らしい女性だ。