「はい! 付き合ってくれて、ありがとうございました!」
鞄を肩に掛け直した花は、「ごちそうさまでした」と店主に声をかけてから店を出た。
そうして、来たときと同じように参道を歩いて大楠神社の鳥居を目指す。
けれど、その途中──本殿に向かう前にも気になっていた【稲荷社】の赤い鳥居を見た花は、思わず八雲に声をかけた。
「やっぱりあちらにも、御参りしたほうがいいんじゃないでしょうか?」
また八雲が不機嫌になるのではという不安はあった。
けれど仮にも商売繁盛の神様がいる社ならば、つくもの主人としてお参りするべきなのではないかと花は考えずにはいられなかったのだ。
「……今日はもう時間がない。だから、あそこへの参拝はまた次回にすればいいだろう」
「え、でも……」
まだ、帰りのバスが来るまでは時間がある。
しかし八雲はそう言うと、足を止めることなく、さっさと稲荷社の前を通り過ぎてしまった。
(私ひとりで参拝してもいいけど……)
八雲が次回にすればいいというのなら、それに従うべきなのかもしれない。
そう考えた花は後ろ髪を引かれながらも八雲のあとを追いかけ、それ以上は稲荷社について触れることができなかった。



