「そうなんですね。そしたら八雲さんオススメの甘酒は、次に来たときには必ず注文します!」
満面の笑みを浮かべる花を前に、八雲は一瞬だけ驚いたように片眉を持ち上げてから、「……ああ、そうしろ」と呟いて微笑んだ。
「多分、お前も気に入ると思う」
向かい合わせに座っていた花は、その穏やかな笑顔を真正面から受け止めるはめになり、反射的に顔を真っ赤に染め上げた。
「あ……う、」
「……なんだ?」
「い、いえ! なんでもありませんので、お気になさらず……!」
俯いた花を、八雲は不審な目で見ていたが、花は取り繕う言葉も思い浮かばない。
(だ、だから……! 不意打ちで笑わないでよ……!)
心の中で叫んでから、花は改めてロールケーキへと目を落とした。
八雲は狼狽える花を前に不思議そうに首を傾げていたが、その仕草のひとつひとつさえもが八雲の整った容姿を引き立てるものにしかならなかった。
「ワ、ワー! ホントに、コノロールケーキ、オイシソウ!」
生粋の静岡人なのに、カタコトの日本語が口から溢れた。
相変わらず八雲は不思議そうに花を見ていたが、今はもう顔を上げることも、別の話題を口にすることも難しい。



