「俺はそんなに腹も空いていないし、そもそも甘いものは苦手なんだよ」
そう言いつつ、甘酒を頼んだあたりに矛盾を感じる。
そんな花の思いは顔に出ていたのだろう。
八雲はちらりと花を見ると、徐に一口、甘酒の入ったカップに口をつけた。
「……昔から、甘酒だけは大丈夫だったんだ。特に甘酒は生姜を入れることで甘ったるさが緩和されて、絶妙に味わい深い一杯になる」
言葉の通り、八雲は甘酒を受け取ってからセルフカウンターへと行くと、用意されていた生姜をカップの中へと入れていた。
つまるところ、八雲は甘酒を飲み慣れているということだろう。
そういえば……以前、熱海梅園へ行ったときに、ぽん太も甘酒を美味しそうに飲んでいた。
昔から付き合いのあるふたりは、好みが似ているのかもしれない。
特に甘いものが苦手な人間をも唸らせる一杯とあれば、是非とも一度は味わってみたい一品だと、花は思わずにはいられなかった。



