ふたりが向かった茶寮は、大楠神社の境内、本殿向かって左手にあった。
一見すると、所謂、社務所のようでもある。
けれど近づいてみれば、今時の、和モダンテイストのオシャレなオープンカフェに違いなかった。
コンパクトな一階の店内には一応ソファ席が用意されているが、主となっているのはテラス席である。
二階にも食事ができるスペースがあるようだが生憎この日は混雑していたので、花と八雲は一階の店内で注文をしてからテラス席に座ることを選んだ。
「あ、私の分は自分で払います……!」
会計の際、まとめて支払おうとする八雲の隣で花が財布を取り出すと、八雲はそれを手振りで制した。
「いい。今日、付き合わせた礼だ」
「え……。でも、今日は私が無理矢理ついてきた感じだったのに……」
弁天岩のところには自分ひとりで行ってくると言った八雲に、自分も一緒に行く!と譲らずついてきたのは他ならぬ花自身だ。
たから、八雲に礼などされる理由はない。
けれど、花が四の五の言っている間にさっさと会計を済ませた八雲は、それ以上の取り付く島を与えてはくれなかった。



