「ふたりに会わせるために、俺の力でお前をこの場所の現世と常世の狭間に連れて行ったんだ」
「狭間に……」
やはり、花が弁財天たちと話をしていた場所は、つくものあるところと同じ空間だったのだ。
(ということは、さっきのは周りの人たちには見えていなかったってこと?)
花は思わず辺りをキョロキョロと見渡した。
境内を歩く人たちは花と八雲の変化にまるで気がついていない様子で、それぞれの時間を楽しんでいる。
「ふたりと話している間の俺達は、現世では一時的にそこにいないように見えていたはずだ。というよりも、気配がほとんどなくなっていた……と言ったほうが正しいか」
それがどういう理屈なのか花には理解できなかったが、兎にも角にも弁財天たちの姿を見たのは自分と八雲だけということらしい。
「つくもに帰るぞ」
そうして一通りの説明を終えた八雲は踵を返すと、来た道を戻ろうとした。
ハッと我に返った花は、そんな八雲の袖を慌てて掴むと呼び止める。



