「ほんとにもう……。でも、花さん。今、弁天岩が言ったことは、本当に気にすることではないのよ。あなたはとても可愛らしいのだから……。八雲さんも、本当にごめんなさいね」
弁財天は呆れたように息を吐いて、改めて花と八雲に謝った。
「いえ、弁財天様が謝る必要などありません。そもそも私が、ご挨拶に来るのが遅れてしまったことが要因ですから」
穏やかな口調で答えたのは八雲だ。
するとそれに反応した弁天岩が、再びシャーッと長い舌を出して威嚇した。
「そうじゃ! 貴様がさっさと挨拶に来んのが悪い!」
やはり、弁天岩は挨拶が遅れたことを随分怒っていたのだ。
「……はい、誠に申し訳ありません。すべては私の責任です。ですから、どうか花に当たるのはやめていただけるようお願い申し上げます」
「え……」
そのとき、唐突な八雲の言葉に、花は思わず目を丸くした。
対して八雲は真っすぐに顔を上げたまま、白蛇の姿をした弁天岩を見つめている。



