「しかし、八雲の趣味がこのような平々凡々な女子とはのぅ。これなら、どこぞの名家の娘と見合いでもしたほうがよかったのではないか?」
「これ、弁天岩。口を慎みなさい!」
弁天岩の軽口に、今度こそ弁財天がピシャリと叱った。
これにはさすがの弁天岩も身を縮めたが、だからといって花に謝るわけでもなかった。
「まったく、この子は……。花さん、本当にごめんなさいね。この子の言うことは、どうかお気になさらず」
眉尻を下げた弁財天を前に、花は「いえいえ」と小さく首を横に振る。
「弁天岩さんの、仰るとおりですから」
八雲と自分が釣り合っていないことは、花自身が一番良くわかっているつもりだった。
傘姫のときも然り、眉目秀麗な八雲の隣に並ぶのがごく平凡な自分では、見劣りして当然だと考えていたのだ。
「ふん……っ。小娘が、自覚しておるだけマシだのぅ」
弁天岩は、八雲と花が挨拶に来るのが遅れたことに、余程腹を立てているらしい。
尻尾をゆらゆらと揺らして小言を言うと、フイっとそっぽを向いてしまった。



