(それにしても、本当に綺麗……)
うっかり心を読まれぬように深く考えることを止めた花は、ひたすらに美しい弁財天の姿を拝んだ。
すると、その花の視線に気がついた、白蛇姿の弁天岩が徐に口を開く。
「しかしまぁ、比べるのもおこがましいことだが、弁財天様と並ぶと驚くほど芋っぽい女子よのぅ」
「な……っ!」
芋っぽい女子──とはもちろん、花のことに違いない。
花は思わず短く声を上げたが、そんな花を見て弁天岩はフンッと鼻を鳴らして嘲笑を浮かべた。
「八雲よぅ。もう少し容姿の整った女子は選べんかったのか?」
「これ、弁天岩。どうしてそう、不躾なことばかり言うのです。……花さん、ごめんなさいね。この子は昔から、口が悪くて」
悪態をつく弁天岩を、再び弁財天が窘めた。
けれど当の弁天岩はどこ吹く風で、悪びれる様子もない。
対して花自身も、弁財天の美しさに比べたら自分は芋どころか芋以下だとわかっていたので、苦笑することしかできなかった。
(傘姫もそうだけど、そりゃあ弁財天様と比べたら、月とスッポンどころか、月と石ころ以下に違いないし……)
そもそも神様と、平凡な人を比べることがおかしい。
そう考えるほか、逃げ道を探せないというのも切なくはあるが……。



