「大楠神社の摂末社のひとつは、第二大楠のすぐそばにある。もうひとつは手水舎で話が出た稲荷社……。そして最後のひとつは、そこにある弁財天の社だ」
八雲の視線を追うように、花は再び本殿向かって右奥へと目を向けた。
すると、木々に囲まれた中に朱塗りの小さな鳥居が建っているのを見つけた。
その鳥居に向かって歩き出した八雲を追えば、鳥居の先に小さな赤い橋を見つけることができ、更にその奥に小さな社があることに気がついた。
「そして、その弁財天の社の前にあるのが弁天岩だ」
八雲の言葉を聞いた花は目を見張る。
たった今、八雲が指した先にあったのは何を隠そう、とても大きな【岩】だった。
その岩があるのは、弁財天の社と池の間だ。
池の中には大きな鯉が悠々と泳いでおり、水面は陽の光を反射してキラキラと輝いていた。
そして肝心の弁天岩の風貌はと言えば、まるで大きなおにぎりのような形をしている。
表面には綺麗な緑色の苔がついていて、しめ縄が貼られていた。



