(これが、樹齢二千百年の大楠……)
花は時を忘れたように、呆然と大楠を見たあと、ふらふらと覚束ない足取りでそばへと寄った。
この場所だけ、明らかに空気が違う。
霊感のようなものを持ち合わせていない花でも、大楠から放たれる生命力を全身で感じ取ることができ、鼓動が脈打つのを感じずにはいられなかった。
「すごい……」
呟いて、花は震える息を吐く。
大楠の荘厳さに圧倒されると同時に、心が洗われるような気持ちになった。
うっかりすると、涙も出そうなほど。
さすがに樹齢二千百年は、伊達ではない。
太い幹は地面から生えたいく本もの腕が絡まり合い大樹となったようにも見え、圧巻且つ、とても神秘的だった。
「この大楠は、国の天然記念物にも指定されている。幹を一回りすると寿命が一年延びると伝えられていて、昔から健康長寿を願う者が多く訪れている場所だ」
「寿命が一年延びる……」
八雲に言われてふと大楠の右側に目をやると、周りをぐるりと一周できるように道が整備されていた。
入口にはたった今八雲が言ったとおり、【天然記念物】と書かれた石碑が建っている。
先程から多くの人が大楠の周りを歩いているのは、御利益にあやかるためだったのだ。



