熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします

 

(それにしても、まさか大楠が本殿の裏手にあるなんて……)


 目的の大楠は、本殿の左脇にある竹林の小道を抜けた先にあるらしい。

 綺麗に舗装された小道は、人ひとり通るのがやっとというほどの道幅だが趣があり、両脇は細い竹に囲まれていた。

 花はまるで、現世にいながら別世界に迷い込んだような錯覚に陥った。

 つくもに迷い込んだ経験があるので、尚更である。

 ぐんぐんぐんぐん、進んでいく。

 すると、道の先に真っ白な暖簾のようなものが見え、それをくぐると大きく開けた場所に出た。


「わぁ……っ!!」


 花は八雲に続いて足を止めると、感嘆の声を上げた。

 目の前に現れたのは見たこともないような太い幹を持つ大樹で、空に向かって大きく枝を広げている。

 大樹の前には小さな祠があり、大樹を背に守るように鎮座していた。