「傘姫様……?」
「……っ、申し訳ありません」
慌てて手にしていたナイフとフォークを置いた傘姫は、着物の袖で涙を隠した。
先程とは比にならないくらいに次から次へと溢れる涙は傘姫の頬を濡らし続け、花は困惑せずにいられなかった。
「も、申し訳ありません。何かお口に合わないものが──!」
「いえ……っ。そういうわけではなく、お料理は大変美味でございました。それなのに、お食事中に……本当に、本当に……申し訳ありません」
肩を震わせる傘姫は、そう言うととうとう顔を隠してしまう。
吐き出される息も震えていて、花はおろおろしながら傘姫を見ていることしかできなかった。
「違うのです、これは悲しみの涙ではなく……。まさかもう一度、こうして源翁様と向かい合って食事ができるとは思わなくて……。こんなことがあるのかと、感極まってしまったのです……」
零された言葉に、花だけでなくその場にいる全員が息を呑む。
ゆっくりと着物の袖を下ろすと涙で濡れたまつ毛を伏せ、そっと微笑む傘姫は何かを思い出すように言葉を選びながら話を続けた。



