「つくもさんには、もう随分通っていますが……。洋食が出てきたのは初めてで、驚きました……」
言葉の通り、傘姫は洋食が出てきたことに驚いた様子で目を見張っている。
花はそんな傘姫を前に微笑むと、再びビーフシチューへと目を向けた。
「はい。傘姫様の仰るとおり、つくもでは基本的に和食をメインにお出ししているのですが……。本日は傘姫様にとって素敵な一日となるようにと願いを込め、このようなメニューをご用意させていただきました」
花の言葉を聞いた傘姫が、ハッとして息を呑む。
傘姫は数回瞬きを繰り返したあとようやく意向を汲み取ったように、ビーフシチューの横に置かれた銀色の食器へと目を落とした。
「つくもの料理長自慢の一品です。どうぞ、召し上がってみてください」
「……ありがとうございます。それでは、せっかくなので、温かいうちにいただきます」
傘姫の目が潤んでいる気がするのは、気のせいではないだろう。
そうして丁寧に両手を合わせた傘姫は、和やかにナイフとフォークを手に取った。



