「あ……あ、あのっ! せっかくだから、このままおふたりで、ご夕食にするのはどうでしょうか⁉」
なんとか緊張の糸を解こうとした花は、大袈裟に元気な声を出すと手を挙げた。
「え……。で、でも……よろしいのですか?」
「もちろんです、ねっ、八雲さん⁉」
花の問いかけに、八雲は瞼を閉じてとても静かに頷いてくれる。
「やった! というわけで、それじゃあ私はこれからお夕食を運んできますね! ほんの少しだけお待ちください!」
そうして花は源翁に化けたぽん太を傘姫と向かい合わせに座らせると、早足に梅の間をあとにした。
厨房に着き、ひと通りの事情をちょう助に話すとちょう助も嬉しそうに受け入れてくれて、すぐさまふたり分の食事をお盆に用意してくれた。
「それじゃあ、今から運ぶね」
「あ……俺が一緒に運ぼうか? ちょうど今、黒桜さんは予約の電話を受けてて忙しいし」
ちょう助の提案に、花は「ありがとう」と言って頷こうとした。
するとそんな花の背後から、「おい」と唐突な声が投げられた。



