「そなたが変わりないと知り、私は嬉しいぞ」
そして源翁も、そんな傘姫の眼差しを受け止めるように柔らかな笑みをたたえている。
傘姫の想い人である源翁は、切れ長の目が印象的な、眉目秀麗の男であった。
年は……三十代後半くらいだろうか。
整った顔つきをした八雲とはまた違ったタイプの、男らしい顔と身体つきをしている。
正座をしながら背筋を伸ばしている姿は威厳に満ちており、そこにいるだけで空気が締まるような風格を持つ男だった。
「あ、あの、私……。まさかまた、こんなふうにお会い出来るとは思わなくて……」
そう言うと、傘姫は俯いて黙り込んでしまった。
なんとも言えない沈黙が、部屋の中を包み込む。
五十年ぶりに会った想い人を前に緊張しているのか、傘姫は真っ赤な顔で必死に言葉を探している様子だった。



