「熱海のポテンシャルが高いことはわかったんですけど、でも、和風のお宿なのに洋食を出すっていうのはありなんですかね……?」
花が尋ねると、ぽん太は「ふむ」と再び目を細めて胸を張る。
「それを言い出したら、付喪神が熱海に旅行に来るなんて……という根本的なところからツッコミが入るぞ」
清々しいほどの開き直りだ。それでも威風堂々と答えるぽん太は潔が良い。
「別に和食だろうが洋食だろうが関係ないじゃろ。大切なのは、お客様にいかに喜んでもらえるかということじゃからのぅ」
断言したぽん太を前に、花も納得せざるを得なかった。
確かに一番大切なのは、和風旅館で洋食といったギャップを考えることではない。
ここで、どのようにしてお客様に喜んでもらえるべきかを考えることなのだ。
お客様にとって最高の一日を提供する。
それがつくもで働く花たちが、成すべきことに他ならない。



