熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします

 

「データの中身を見ると傘姫は、毎年決まって肉料理は残さず食べているという記録があります」

「なるほど……」


 つまり傘姫は食が細いからこそ、好きなものを先に口にしていたのだろう。


「でも肉料理となると、たとえばすき焼きとか、しゃぶしゃぶかな……」


 ちょう助が顎に手を当てて考える。


「すき焼きにしゃぶしゃぶ……」


 どちらも花の大好物だ。

 花は思わず喉を鳴らしたが、食が細い傘姫に出す料理にしては少々ボリュームがありすぎるような気もしないでもない。


「確かにどちらも肉料理ではありますが、一品料理に鍋物となると、やや寂しい感じがしますね」


 黒桜も難色を示していた。


「ですよね……。それにせっかくなら、熱海らしい一品をお出ししたいと思いますし……」


 ちょう助は口をへの字にして頬杖をついた。
 
 黒桜も花も同じように頭を悩ませたが、これなら!という肉料理は簡単には浮かんでこない。