熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします

 

「それ、いいと思う。思いっきり手間ひまをかけてクオリティの高い一品に仕上げれば、品数を多く出すのと遜色ないものが出せるだろうし!」


 ちょう助は表情を明るくして声を弾ませた。

 それを聞いた花も笑みを浮かべて、ぽん太と黒桜の答えを待つ。


「……そうですね。食が細くても残す品の数が少なければ、傘姫を必要以上に恐縮させてしまうこともないでしょう」


 黒桜も納得しながら微笑んだ。


「ふむ……。それで傘姫を満足させることができれば完璧ということじゃな」


 けれどぽん太の核心をつく言葉に、またちょう助が「うーん」と難しそうに首をひねった。


「……ですよね。問題は、どんな料理をお出しすれば、傘姫を満足させることができるかってところで」

「虎之丞さんのときで言えば鯵みたいな、傘姫の好物を使った料理をお出しするとか?」


 花がそう言って顎に拳を当てると、黒桜がポン!と軽快に手を叩いた。