「傘姫の事情はわからないけど、一年に一度だけ決まった日に来るなら、きっとその日は傘姫にとって特別な日ってことでしょう?」
花の質問に、またぽん太と黒桜が複雑そうな表情をする。
「特別な日に出される、特別な一品って、出されたほうにも特別な思い出になって、ずっと記憶に残るんだよね……。だから、もしかしたら傘姫にも言えることなんじゃないかと思ったんだけど……」
まつ毛を伏せた花は、今は亡き母の面影を思い出していた。
『誕生日、花は何がほしい?』
『ママが作ったハンバーグがいい! いつもより、もっともーっと大きい、でっかいの!』
それは五歳の誕生日を迎える数日前の記憶だ。
母は幼い花の願い通り、誕生日当日にはいつもの三倍はあろう特別なハンバーグを焼いてくれた。
「だから、その日が傘姫にとって少しでも良い思い出になるような、心を込めた一品をお出しするのはどうかなと思ったんだけど……」
花が苦笑いを零すと、「……うん」と、ちょう助が頷いてから拳を握る。



