「単純に食べきれないなら、量を減らすしかないかなって、前に登紀子さんとは話してたんだけど……」
「じゃがなぁ、料理の品数を減らすのでは見栄えが悪くなるだけだら?」
「そう、ぽん太さんの言うとおりで、単純に量を減らすっていうのは、解決策にはならないと思うんだ」
「だから登紀子さんも、残してもいいからお料理をお出ししようってところに落ち着いていたんだ」……と、ちょう助は続けた。
相手は五十年前から毎年決まった日に、つくもに訪れるお客様だ。
確かにふたりの言うとおり、あからさまに料理の量を減らせば、傘姫に品数を減らしたことを悟られてしまうだろう。
今の話を聞く限りでは傘姫が虎之丞のようなクレームをつけてくる客ということはなさそうだが、宿泊料は同じでお出しする料理を減らすというのは、宿としても最善策とは言えなかった。
とはいえ、また食べきれない量の料理をお出しすれば、食の細い傘姫を恐縮させてしまうことになる。
先程のちょう助の口ぶりでは、謝らなくていいとは前料理長の登紀子さんも散々言っていたのだろう。
それでも傘姫は、真心を込めて出された料理を残すことに抵抗を感じる、心の優しい付喪神様ということだ。
横柄で頑固だった虎之丞とは、雲泥の差があると言わざるを得ない。



