「わかったら、さっさと仕事をするんだな」
そんな花の心情を見透かしたように、八雲はそれだけを言い残すと踵を返して行ってしまった。
偉そうに……!と花は思わず臍を噛んだが、実際、若旦那という立場の八雲は花よりも偉いので、言い返すことは叶わなかった。
「でも! だからって、なんなのあの言い方……っ」
八雲の姿が完全に見えなくなってから、花は鼻息荒く息巻いた。
「まぁまぁ、八雲がああ言うのなら仕方がない。わしらは精一杯、傘姫のもてなしに備えるとしよう」
モフモフの尻尾を左右に揺らしたぽん太が宥めるように花に声を掛けたが、花の気分は最低なものだった。
「あ……そうだ。それでさ、今の話で相談があったんだけど」
その空気を払うように話を切り出したのは、ちょう助だ。
ちょう助は先程まで何かを書き込んでいたノートのページを開くと、うーんと小さく唸ってみせる。



