「そうなんですね。でも傘姫は、どうして年に一度、決まった日につくもに来るんですか?」
花の質問に、何故か黒桜は曖昧な笑みを浮かべる。
そんな黒桜を前に花は思わず首を傾げたが、代わりにぽん太が花に説明しようと口を開いた。
「それはなぁ、その日が傘姫の──」
「それ以上は説明する必要はないだろう」
しかし、そのぽん太の言葉を八雲が切った。
「傘姫の事情は、こいつには関係のない話だ。こいつは一年後には現世に戻り、ここにはいない。つまり傘姫に会うのも今回だけ。だからお前は余計なことは考えず、ただ今回の一日、傘姫をもてなすことだけを考えていろ」
「な……っ!」
けんもほろろな八雲の言葉に、花はつい眉根を寄せた。黒桜とぽん太は苦笑いを溢して、額に手を当てている。
(な、なんなの、その言い方……! やっぱりこの人に、一瞬でもときめいた自分がバカだった……!)
「あ、あのですねぇ──」
花は咄嗟に反論しようと身を乗り出した。
けれど、すぐに先程のぽん太たちとの会話を思い出すと出かけた言葉を飲み込んだ。
『一年間で善ポイントが溜まったら、私は現世に帰りますから! これは決定事項なので!!』
確かに八雲が今、言ったとおりだ。
花自身が先程宣言したとおり、一年分の善ポイントが貯まったら、花は現世に帰ろうと思っている。
だから傘姫と会うのも今回限りになるだろう。
それなのに傘姫の事情を知りたいと思うのは、ただの好奇心に過ぎず、野次馬根性に他ならない。



