「俺も八雲さんはすごく優しくて良い人だと思うけど……。逆に花は、八雲さんの何がそんなに気に入らないの?」


 ノートから顔を上げ、さも当然のように尋ねるちょう助は、八雲に助けられたという恩があるので疑問に思うのも当然なのだろう。


「そりゃあ確かに、少し無愛想なところはあるかもしれないけどさ。だけど今、黒桜さんが言ったみたいに見た目もすごくカッコイイし。いざというときには頼りになるし、特に文句をつけるところもないんじゃない?」


 子供の純粋無垢な瞳で見つめられると、花は怯まずにはいられなかった。

 しかし、だからといって、花にも譲れないものはあるのだ。

 嫁に行くというのはつまり結婚するということで、人生でも早々ない一大決心を「はいそうですね」と簡単に決められるわけもない。


「ちょ、ちょう助くんまで……。だ、だからね? 八雲さんが気に入らないとかそういうことより……そもそも私は自分が、付喪神様のお嫁さんになるとか考えられないし……」

「え?」


 もぞもぞと花が答えると、三人が一様に驚いた顔で目を見開いた。