「……花?」

(危ない、嬉しすぎて思わず叫ぶところだった……っ!)


 顔を真っ赤にして視線を斜め下へと逸らすちょう助は、たまらなく可愛い。

 可愛くて愛しくて、思わずギュッと抱き締めたい衝動に駆られたが、花はグッと堪えて笑顔を浮かべた。


「もちろんっ! これからも、よろしくね!」


 真っすぐに差し出した手に、小さな手が重ねられる。

 その光景を、受付の奥からぽん太と黒桜がひっそりと微笑みながら眺めていた。

 外は身が切れる寒空だったが、花の心は明かりが灯ったように温かく、潤っている。

 翌日、晴れやかな笑顔で宿を出た虎之丞を見送った花は、改めて言葉にできない喜びを感じた。