「真っ暗な世界でずっとずっと考えてた。人なんて、ものを使うだけ使って用がなくなったら簡単に捨てるんだって……ずっと、そう思ってた」


 暗闇の中で蹲るちょう助の姿を想像したら、花は胸が酷く痛むのを感じた。


「でも、ある日、八雲さんが俺を助け出してくれたんだ。それで、つくもの料理人見習いとして雇ってくれて、登紀子さんに弟子入りさせてくれた」

「八雲さんが……?」


 ちょう助の口から飛び出した八雲の名前に、花の鼓動がトクリと跳ねる。

 不思議とそのときの光景を思い浮かべると胸の奥が温かくなって……花はなぜだが、心臓が高鳴るのを感じていた。


「俺、人なんて大っ嫌いだと思ってたけど、でも、付喪神にも色々いるみたいに、人にもいろんなやつがいるんだよな」


 ちょう助の言うとおり、付喪神様も色々だと花は今回のことで嫌というほど思い知った。


「俺、人は嫌いでも、多分お前のことは嫌いじゃない。だから……今まで、本当にごめんな。お前こそ良ければ……じゃなくて。花こそ良ければ、これから、仲間として一緒に頑張ってもいいかな?」


 ちょう助が、初めて花を名前で呼んだ。

 それに言いしれぬ感動を覚えた花は、思わず両手で自身の口元を覆い隠した。