「そう考えると私って、ほんとに相当貴重な体験してるんだなぁ」
「……は?」
「あ……ご、ごめんね。でもなんか今、改めてちょう助くんの話を聞いたら、自分はすごく良い経験させてもらってるんじゃないかって思って……」
花の言葉に、ちょう助が意外そうに目を見開いた。
「熱海梅園にだって、つくもに行ってなければ一生来れなかったかもしれないし。そう考えるとつくも様々だなぁとかも思ったりして、ふふっ。私、変だよね」
しみじみと言う花はクスリと笑うと、改めて紅白に染まる梅花を眺めた。
そんな花の真意を探るように見るちょう助は、花を見つめたままで口を開く。
「一生って……大袈裟だろ。俺達、付喪神はそんなに気楽に現世をウロウロはできないけど……。お前は人なんだから、梅園でもどこでも来ようと思えば来られるはずだし、いつでも行きたいところに行けるはずだ」
ちょう助の言うことは最もだ。
人である花はちょう助たち付喪神とは違い、気兼ねなくあちこちを見て回れる立場にいる。
「お前たち人は、綺麗なものも美味しいものも、これからいくらでも見られるし食べられる。どうせ、これまでだってそうだったんだろ? お前は俺達とは違う"人"だから、現世では……自由に動き回れるだろ」
どこか投げやりな口調でそう言ったちょう助は、フイと視線を逸してしまった。
今のちょう助の物言いに花は引っ掛かりを感じたが、掘り下げて聞けるほど、ちょう助に心を許してもらえていないことは嫌というほどわかっていた。



