父の通院費も、小春の学費も、借金も。

私が頑張れば何とかなる。小春もバイトを初め、収入源も増えた。いずれ全て片付く日がくる。だから、耐えろ耐えろ耐えろ。



──そんな千切れそうな精神力の中朝から晩まで働き続け、ファミレスの夜勤から家に帰宅した日の事だった。



「あー?大丈夫大丈夫。明日の昼なら空いてる」



深夜だからと音をたてないように静かに家の玄関を開け中に入ると、部屋のドアの向こうからそんな声が聞こえた。

話し声は一人。どうやら電話をしているらしかった。

そして、それが父親の声だとわかるまでに少し時間がかかった。わかってからすぐに自分の耳を疑った。

だって、あんなにはっきりとものを話す父親の声を聞いたのは一体何年ぶりか。いつもはあんなに声が震えていてか細いのに。何かに怯えているように、聞き取れないくらい小さい声で不安定に言葉を話すのに。



なのに、どうして。



「あー、金?大丈夫だから。通院費用に貰ってるやつ使うから平気」