えっと、どこかで会ったことあるっけ?などと記憶の引き出しを探している場合ではなかった。
「えー、妹さん?君ら姉妹そろってすっごく可愛いね。俺らとどっか遊び行かない?」
男が、そう言って女の子の腕を掴んだ。
「…放して下さい」
女の子が掴まれた手を振りほどこうとするけれど、男はその手を離さない。もう一人の男も、ニコニコと不適な笑みを浮かべている。
…何とかしなくちゃ。
明らかに自分よりずっと年下の女の子を巻き添えにしてしまっている。
分かっているのに足が竦む。
どうしようと涙で視界が霞んだその時だった。
背後から近づいた足音がやがて側で止まる。
「早瀬、何やってんの?」
早瀬、と呼んだその声に俯いていた顔を上げる。
「…羽水社長」
「誰、早瀬の知り合い?それとも芝波さんの?」
そんな羽水社長の問いかけに、女の子は冷静に、私はテンパりながらとりあえず首を横に振る。すると、羽水社長はそうなんだと小さく呟いて、今度は男達に向かってニコっと爽やかに微笑んだ。

