「や、やっぱり怖い大丈夫じゃない、ごめんなさい…っ」

あまりの京の怖さに耐えられなくて泣きながらそう謝ると、京は小さくため息をついてからようやく私を解放してくれた。




✳︎






「びっくりした〜…。
京がおかしくなっちゃったかと思った」

京の急変事件が落ち着き、二人でリビングのソファーに並んで座ってコーヒーを飲む。

「おい、俺が言いたかった事わかってないのか」
 
そう怖い顔で言われて、慌てて訂正した。

「それはわかったってば」

そう言って少し膨れる。
京は男の人の怖さを私に教えてくれたんだ。
実際、全力を出して暴れても涼しい顔をしてびくともしない京を見て、自分の非力さを思い知った。

わかったけど、砂川さんと私がそうなる事なんて有り得ないし、砂川さんも私の事をからかっているだけで本気な筈がない。

…でも。

── 黒瀬君、芝波さんの事すごく大切にしているように見える。

そんな砂川さんの言葉を思い出し、確かにそうなのかもなぁと思うと少し嬉しくなった。


「自分が過保護なのも、桜の年齢もわかってる。
でも、お前が大人に見えないから困ってるんだ」

「………。」

(…んん?)

京のそんな言葉をきいてから、少し嬉しくなった気持ちは何処かへいってしまった。

どうして京はいちいち私に無神経な事ばかりいうのだろうとやっぱりむくれた。