羽水社長に家までの道を運転して貰っている最中も、私の頭からはずっと病室で見た羽水社長の切なげな表情が頭から離れなかった。

…きっとこれから先、羽水社長は芝波社長に告白しない。

いつの頃からか、羽水社長は芝波社長に対して初恋が何だと言ってからかったりしなくなった。

いつ意識を取り戻すかどうか分からない黒瀬さんを想い続ける芝波社長の側にいて、危うくて放っておけない芝波社長の事をただ、自分の想いに蓋をして支えてあげるつもりなのだ。

羽水社長は…そういう人だ。
ずっと側にいたから、ずっと羽水社長の事を見てきたから、何となくわかる。 


芝波社長を困らせたくないのだ、きっと。



芝波社長には、元々何の繋がりもなかった私でさえは何故か庇護欲を掻き立てられる。


…私でさえそうなのだから、芝波社長に恋をしている羽水社長はなおさら、黒瀬さんを失ってひとりきりになってしまった芝波社長を決して放ってはおけない。


そんな事はわかっている。

でも。