「…18年か」
裁判所から出て、羽水社長がそう呟いた。
芝波社長と黒瀬さんを引き裂いておいて、たったの18年。
そんな私の内心の呟きは、口に出さずに留めた。
「倉掛の言ってた事が本当なら、砂川さんも辛いな」
「…はい」
砂川さんは、倉掛さんが犯行に及んだ理由ともされる人物だ。そんな立場にある砂川さんはただでさえきっと辛い。
でも倉掛の言う通り、もし本当に砂川さんが芝波さんの事を好きでいたというのなら、砂川さんはもっと酷く辛いだろう。
だってこんな事になってしまった今、私が砂川さんの立場だったらきっと芝波社長に一生好きだなんて言えないだろう。
「早瀬、今から黒瀬さんのとこ見舞い行こうか」
「はい」
そう言って促されるまま羽水社長の車に乗り込んだ。
そういえば、羽水社長の車の助手席に座るのはもういつぶりになるんだろう。
そう心の中で呟きながら、ハンドルを握る羽水社長の隣に腰を下ろした。

