「なんだ…何なんだよ、お前ら…。
芝波桜は…撃たない。黒瀬を亡くして、半身をなくしたままこれから一人で生きて…苦しみ続けるんだ…」

そう言う倉掛君の手の中から銃が滑り落ち、床に音を立てて落ちる。
その表情には、さっきまでの不敵で不気味な笑みはすっかり抜け落ちていた。
何の感情も感じない、無表情というのはこういう表情のことを言うのだと知った。


「…良かった」


京は小さな声でそう呟くと、再び床に崩れ落ちるようにして倒れ込んだ。


「京…っ!」


金切り声でそう京の名前を叫ぶ私を見て、
京は苦痛に顔を歪めながらも、それでも優しく微笑み続けた。


いつもは無愛想なくせに、こんな…こんな時にだけ、ずるい。


「桜が無事で良かった…」


「駄目、京、喋らなくて良い…!」


「桜が無事ならそれだけでいい。…これからも生きてくれ、俺の為に生きていてくれ」


「京…」


涙で京の顔が歪む。


嫌、嫌、嫌、嫌。


神様、神様どうか、京を連れて行かないで。

私から京をとらないでください。

京の他には何も要らないから。
これから先、他のことを何も願ったりしないから。

だから…だから。

後生だから死なないで。



「ぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」




京に頭を擦り付けて泣きじゃくる。


やがて京は喋るのをやめ、力尽きたようにゆっくりと目を閉じた。