「京、新聞ありがとう。お帰りなさい」
部屋に戻り桜にとってきた新聞を渡すと、桜は力なくどこかぎこちない笑みをうかべながら俺の手から新聞を受け取った。
───何度言ったらわかるんだ、一人で出歩くなって言っただろ…っ!
そんな桜の態度にさっきとってしまった自分の余裕のない態度を思い出し、怯えさせてしまったとほぞを噛んだ。
「…さっき、俺の婆ちゃんが亡くなったって母さんから連絡があったんだ」
そう告げると、桜は俯きがちだった顔を上げ、目を大きく見開いた。
「だから今から埼玉に行かなくちゃならなくなった。葬式もあるから、今日中に帰るって訳にもいかない。ずっと側にいるって約束したのに、ごめんな」
そう言って謝ると、桜はとんでもないというように顔を横に振った。
「そんな、私との約束なんて。
…病気だったの?」
「いや、今朝突然倒れたって。死因はまだわかってないらしい」
「そっか…」
「随分と長生きした方だよ。
…じゃあ俺は行くけど、その間、頼むから家で大人しくしていてくれ」

