京が社長室をでて程なくして、砂川さんを連れて戻ってきた。
部屋の椅子の中で小刻みに震えながら荒い呼吸を繰り返す倉掛君を見て、砂川さんは急いで倉掛君の側に駆け寄った。
砂川さんが倉掛君を落ち着かせるように肩と背中を一定のリズムで優しくたたくと、さっきまで苦しくそうに顔を歪めていた倉掛君の表情が解けるようにやわらくなっていくのがわかった。
「宗次郎…何があった?誰にやられたんだ」
私達が聞く事を躊躇したそれを、砂川さんが口にする。
倉掛君は、一瞬躊躇うように目を伏せ、それから被るように羽織っている京のジャケットをきゅっと引き寄せながら、ポツリポツリと何があったかのかを話し始めてくれた。
「さっき…事務所の前を歩いてたんです。そしたら突然、誰かから急に強く腕を引っ張られて。気がついたら茂みの奥に連れ込まれてて…えっと、あの事務所の周りの小さな茂みの奥…です。
口を大きな手で覆われて、声、出せませんでした。
そして、急に馬乗りになられたあとに首を締められたん、です。呼吸ができなくって、苦しくて。
でも、意識が飛ぶ寸前になって手を緩められて、やっと息ができるようになったと思ったらまた締められて…の、繰り返し、で。
頭と体がおかしくなってしまいそうでした。
その後、無理やり服を脱がされそうになりました。僕の事…女だと….思ってたのかな。俺の体を見て俺が男だってわかったみたいで、そうしたら…ようやく、手を離して貰えました」