「今季のドラマの主演に、西条梨架を推そうと思うんだけどどうかな」

西条梨架というのは今うちのプロダクションで売り出している若手の女優だ。
桜がそう京に話すと、京はどこか気の抜けたような返事を返した。
 
「え?あぁ、いいんじゃないか」

「だよね。今まで梨架ちゃんが演じてきた役とは今回結構感じが違うんだけど、ショートカットにしてイメージもがらっと変わったから、こういう役に挑戦するのも良い機会なんじゃないかなと思って…って、京聞いてる?」

聞いてるよと答える京はやっぱりどこか余裕がないように見えた。

2日前に羽水社長と何かコソコソと電話をしているところを見てから、ずっとそんな調子だ。
どこか余裕が無さそうだったり、かと思えばピリピリしていたりする。

あの後、一体羽水社長と何話してたのって聞いても結局教えてくれなかったし。