お父さんと京が私に内緒で決めて勝手に計画を進めていたパーティー。

社長就任パーティーなんてそんなもの開かなくていいと駄々をこねていたのは私だ。
でもそれに頑なに頷いてくれなかったのは京で…
それなのに、いきなりどうして。

聞きたい事は私の顔に出ていたらしく、何も聞かずとも今日はゆっくりと答えてくれた。

「事務所宛にメールが届いたんだ。パーティーで、その主役を拐うって」

「そんな……」

嫌がらせは終わっていなかった。
そんな事実に目の前が急に暗くなる。

パーティーなんて元々開いて欲しくなかったし、正直面倒くさいとずっと億劫に感じていた。

だが、会場を押さえたり招待状を配ったり、京が一人で色々用意をしてくれていたのに。そしてそれはきっと簡単で楽なものじゃない。それなのに、それがそんな嫌がらせ一つで台無しになると思うとやるせない気持ちが言葉にならなかった。


「そんな残念そうな顔するな。元々やりたく無かったって言ってたろ」

「でも、京がせっかく準備してくれたのに。それに招待状も配っちゃってるんでしょ?」

「俺が何とかするから、心配するな」


そういって京が私を安心させるように優しく微笑んで頭を撫でる。温かな今日の手の温度が何だかくすぐったくて、そして泣きたくなるほど申し訳なかった。