「あれ、お前コーヒーどうした?」


いつものように夕食を作りに私の家に来てくれた京が、棚を覗いて首を傾げた。

きっとこの間までインスタントコーヒーの粉が切れかかっていたのに、またその量が蓋の手前まで復活していたから驚いたのだろう。

「うん、昨日スーパーで買ってきたの」

「え…スーパーに行ったのか?」

「うん」

京が驚いたように目を丸くする。
それもその筈。今まで私が買い物に行く時は、いつも京が車を出してくれて付き合ってくれていたのだ。改めて、京に甘えた生活から少しずつ抜け出す努力をしなければと内心で拳を握った。

「買ってきたって、お前一人で?」

「……。」

京はいつも私の痛いところを突くのが上手い。
さっきまで誇らしげに堂々としていた私の表情が一瞬で曇るのを自分でも感じた。