若者たちのじゃれ合いを「いいな、若いって」と眺めるオースティンと、緊張感のなさは強さ故の余裕なのかと分析するイアン。
 メアリは恋人の困惑する姿を可愛いと……いや、不憫に思いフォローに入る。

「だ、大丈夫。話をする時は私ひとりでするから」

 その言葉にイアンは眉を顰めた。

「ひとりで? 危険です」

「危険なんてありません。元々ヴェロニカ様に殺意はなかったんですから。それに、ヴェロニカ様からは見えない位置にユリウスにいてもらうので」

 それならいいですよねと確認したメアリに、イアンは仕方なく頷いた。

「わかりました。ではユリウス」

「はい。お任せください」

 早速控えの間を出るふたりの後ろから「間違っても姿を見せるなよー」というルーカスの忠告が聞こえてきて、メアリはふふっと笑ってしまう。

「メアリまで」

「ごめんなさい。でも、ちょっと安心して」

「安心?」

 地下牢を目指し、廊下を歩きながらユリウスが首を傾げると、メアリは気遣うように微笑んだ。

「ルーカスとクラウスは受け入れてくれていたけど、イザークはヴラフォスの皇子であるユリウスの裏切りに怒っていたようだから」

「ああ……そのことか。ごめん、心配かけて。もう大丈夫……とは言いにくいけど、騎士たちの理解は得られているから。あとは、心から信頼してもらえるように時間をかけてアクアルーナと君に尽くして償っていくよ」