「誰かを庇っているか、もしくは、口にすると身に危険が迫るのでしょう」

「まあ、どちらかだろうな。ああ、それから、陛下にもうひとつご報告したいことが」

 イアンの意見に頷いたオースティンにメアリがどうぞと話すように促す。

「実は、陛下を襲ったならず者の中に、ひとりだけ生き残りがいましてね。話せるようになったので、こちらも尋問したところ、スラムの住処に突然知らない男が訪ねてきて、大金を渡し、その男が指定する女を襲えとの依頼があった、と」

「もしかして、それがたまたま私だったということですか?」

「たまたまかどうかはわかりませんが、ならず者たちは女王陛下であるとは知らず、男に指示されたまま襲ったそうです」

 オースティンの言葉に、メアリは独り言ちるように唇を動かす。

「ヴェロニカ様もならず者たちも、正体不明の人と毒が関わっている……。もしかして、同じ、人?」

「その可能性は十分にあり得るかと」

 ならず者たちに使われた毒は不明だが、手口やタイミングを見ても、同じ者が暗躍している可能性は高い。
 イアンがメアリの予想を肯定したその直後、謁見の間の扉が開け放たれ、供を連れたランベルトがずかずかと入室してきた。
 衛兵たちを一喝し振り切るその顔は、激しい怒りに燃えている。
 近衛騎士隊長たちが即座にメアリを守るよう、玉座の前に整列し、剣の鞘に手を添える。