「ヴェロニカ様は、やはり毒だと知らなかったようです。催眠の効果があると、ある人物に渡されて使い方を教わったと話していました」

「催眠、ですか?」

 それを自分に飲ませてどうするつもりだったのかと、首を傾げるメアリにオースティンは苦笑し説明する。

「陛下を催眠状態にし、意中の者が自分のものになるように促すつもりだった、と」

「意中の……」と、メアリはそこまで口にして、それが誰であるか思い至った。
 思わずユリウスに視線を向けそうになり、慌ててオースティンに戻す。

 自分のせいで危険に晒したと、ユリウスは責任を感じているはずだ。
 悪いのはヴェロニカであることは誰しもがわかるが、今メアリがユリウスを見てしまえば、『あなたでしょう』と責めてしまう印象を与えかねない。
 大勢の前でそんなことはしたくないと、メアリはぐっと堪えてオースティンに質問を投げかける。

「ある人物というのは?」

「入手経路を含め、一切話しません」

 オースティンの報告に、イアンは「なるほど」とメアリを見た。