「ユリウスが話していたものと同じ?」

「恐らく」

 ユリウスから報告を受けた際に、すぐには溶けない毒の話を聞いていたイアンが頷く。

「その毒の効果は……?」

 不安に眉を下げるメアリに答えたのはジョシュアだ。

「ごく少量の摂取であれば嘔吐、頭痛、めまい、血圧低下。量が多い場合、心臓麻痺を引き起こし、半刻も経たぬうちに死に至らしめる」

 ジョシュアが並べた症状の恐ろしさに、メアリは青ざめる。

「メアリ、大丈夫かい?」

「はい、先生……」

「陛下、ヴェロニカ様は現在地下牢にて尋問中です。状況を見ていたユリウスも尋問にあたらせています」

 詳しくは明日、改めて報告するが、今のところヴェロニカは『毒だとは知らなかった』とだけ繰り返しているということだった。
 加えて、ヴェロニカについていた侍女ふたりは、毒が仕込まれていたことを全く知らなかったようだとも。

「オースティンの指示の元、衛兵と近衛騎士たちは厳重な警戒態勢に入っています。どうぞ安心して部屋でお過ごしください」

「ありがとうございます」

 礼を述べたメアリに、ジョシュアは用意してきていた薬を手渡す。

「リラックス効果のある薬だよ。もし不安が強いようならこれを飲んでから眠るといい」

「はい、先生もありがとう」

「言っただろう? 可愛いメアリのためなら、例え火の中水の中。早朝だろうが真夜中だろうが遠慮せずに僕を頼ってくれと」

 他にも必要なものがあれば無理せず言うようにと言い残し、ふたりは退出した。