「女王陛下におかれましてはご機嫌麗しく」

 午後、約束の時刻になると、ヴェロニカはランベルトの屋敷で働く二名の侍女のみを連れて離宮へやってきた。

 柔らかなクリーム色に染まる三階建ての四角い建物。
 庭には東屋もあり、庭園を眺めながらお茶を嗜むことができる。
 しかし、今はまだ気温の低い季節なため、室内の一階にあるサロンにて茶会を催すこととなった。

「本日はお招きいただき感謝しますわ」

「こちらこそ、お茶会のお誘いをありがとうございます」

 可憐な紅色の家具やカーテンで飾られたサロンで、挨拶を交し合う。
 ヴェロニカはちらりとメアリの後ろに控えるユリウスを見てから、またメアリへと視線を戻した。

「ならず者たちに襲われたこと、存じ上げています。大変でしたでしょう。少しでもお心を慰められればと思い、お声がけさせていただきましたのよ」

「お気遣い、いたみいります。とても嬉しいです。ヴェロニカ様とゆっくりお話しできたらと思っていました」

 メアリが微笑むと、ヴェロニカも睫毛の長い妖艶な瞳をにっこりと細める。

「まあ、嬉しいですわ」

 華やかに飾られたテーブルにふたりが向かい合い席に着くと、ヴェロニカが侍女に「アンジー、あれを」と指示する。

「はい、ヴェロニカ様」

 アンジーと呼ばれた侍女が、手に持っていた籠をテーブルの上に置いた。
 被せられた上質な布をヴェロニカが外すと、現れたのは立方体の箱だ。

「こちら、ジポーニ大陸より取り寄せた茶葉です。すっきりとした味わいでリフレッシュできるのではとお持ちしました。こちらのカップもこの茶葉の香りをイメージして選びましたの」

「素敵ですね。ありがとうございます」

 礼を述べると、さっそくヴェロニカの侍女たちが支度を始める。