アクアルーナ城の北東には、先王メイナードの母が親しい者たちとの社交の場にと建設した離宮がある。
 母マリアも何度か利用していたとのことだが、メアリはまだ訪ねる機会がなく、足を運んだことのない場所だ。

「離宮であれば警備も万全です。万が一、ランベルト大侯爵が何か企んでいるとしても、怪しい者は入城させずにすむ」

 誘いを断らずに済み、二心があっても抑制できる。
 加えて、もしヴェロニカが離宮で過ごす提案を断った場合、企みがあった可能性も予測できるのだ。

 最善の方法に、メアリは「さすがイアン様ですね」と両手を合わせた。
 すぐに返事をしたためたメアリ。

 翌日、ヴェロニカから『離宮でのお茶会を心から楽しみにしています』という快諾の返信が届いた。
 まだ油断はできないが、二心の可能性が低くなったのではとメアリは安堵した。

 好意的な誘いであることを願いつつ、迎えた当日──。