「メアリ、気をつけるだけじゃ足りないだろ?」

「え? あとはどうすれば……」

 隙を見せないように気をつける以外に何をすればいいのか。
 必死に思案するメアリの手を取ったユリウスは、愛らしく細い指を自身の唇に触れさせた。

「ここに、君からの口づけを」

「ええっ」

 驚き目を見張るメアリの顔が、見る見るうちに羞恥に彩られていく。
 自分からユリウスに口づけたことなどなく、与えられた甘い罰に戸惑うメアリ。
 ユリウスは「くれないの?」とふたりきりなのを良いことに、美しく整った顔を赤いバラのように赤く染まるメアリの顔へと寄せた。

「ほら、早くしないと誰かに見られてしまう」

 囁かれ、強請られ、メアリは勇気を出してユリウスの唇に自分の唇を軽く重ねた。

「こ、これでいい?」

「いいはずないだろ? 足りない。もっと」

 そう言うと、ユリウスは自分から口づけ、ふっくらとしたメアリの唇を堪能する。

 今、誰かが入ってきたら見られてしまう。
 メアリは眉を下げ、ハラハラしながら、愛する人の口づけに翻弄されていた。