──執務室の立派な机の上に積まれた書類。
 イアンに確認しながら御璽を押して決裁し、その山が無くなると次の予定までの間にユリウスと剣術の稽古に励む。
 昼食を済ませたあとは体の為に小休憩は取るものの、次のダンスレッスンが終わればまた剣を手にした。

 そうやって、公務などの合間にユリウスとの稽古に励むこと数日。
 その日の公務が早めに終わったメアリは、王族専用の訓練場にユリウスと向かい合い立っていた。
 階下に広がる近衛騎士団の鍛錬場では、休憩中の近衛騎士たちが見守っている。

「では陛下、まずは撃ち込んでください」

「はい」

 いつものワンピースドレスとは違い、布製のクロスアーマーを纏うメアリが練習用のロングソードを構えた。
 剣も姿勢も真っ直ぐにし、左足を前に出す。

「はぁっ!」

 声と共に振り下ろしたメアリの剣を、ユリウスは切り上げ容易く受け止めた。
 ユリウスに強い力で弾き返されカウンター攻撃に合うも、メアリは首を狙う切っ先を上手くかわしてすぐさま攻撃体勢に入る。
 ふらつかぬよう重心をしっかりと意識し、剣を切り上げるが動きを読んでいたユリウスは、笑みを浮かべながらメアリの剣をとらえた。

「良い動きです」

「ありがとうござい、ま、すっ!」

 ユリウスの剣をどうにか力で払いのけ、そうやって攻撃と防御を繰り返していく。
 騎士たちからの声援を受け、滲む汗が顎から滴り落ちる。